郷愁のツインアルペジオ

邦楽ロックを中心とした自己満足音楽レビュー

10年前のアルバムをレビューする

 2018年、あけましておめでとうございます。ということで早速ですが、10年前の2008年にリリースされたアルバムを軽く紹介していきたいと思います。

 

  • Who are you? - NICO Touches the Walls

 個人的に2008年はおろか僕の人生最強の名盤である、イケメンロックバンド・NICO Touches the Wallsの1stフルアルバム。ジャケットのイメージ通り、ルーツにブラックミュージックを感じる太いグルーヴにこれまた腰の据わったギターリフが乗っかる曲がアルバム全体を通して並んでいる。そしてボーカル光村が紡ぎだすメロディアスかつどっしりとしたリズム感のあるメロディによって、歌と演奏の両方を聴かせることに成功している。「手をたたけ」や「ホログラム」しか知らない人は是非聴いてみてほしい。こんな取っつきにくい曲をカッコよく聴きやすくしてくれるバンドそうそうないから。

 おすすめの1曲…M-11「葵」

 

 ヴァイオリン擁するロックバンド・BIGMAMAの2ndフルアルバム。この頃はまだメロコアやエモを基調とした音楽性で、日本語が入っている曲も4曲のみ。1stアルバム「Love and Leave」は王道エモな曲が並んでいたが、このアルバムはダークな曲とポップな曲にはっきり分かれている印象を受けた。そして、M-2~4、8といったダークな曲がめちゃくちゃカッコいい。半面、M-6、7、9のポップな曲はふざけた歌詞も相まってかイマイチ。とはいえなんだかんだM-1やM-11のような王道エモソングが一番好き。

 おすすめの1曲…M-1「Paper-craft」

 

        

 岐阜県を代表するバンド・cinema staffのデビューミニアルバム。無機質な印象の曲が多いインディーズ期のアルバムの中では一番メロディが明るく切ないと思う。歌詞も、M-1「AMK HOLLIC」なんかは最初「何言ってんだコイツ」と思いながら聴いていたが、大学で軽音楽部でバンドを組んでみて初めて分かるようになったので、聴き込み甲斐はある。ただ、如何せんデビュー作なので、必要性を感じない変拍子が入っていたりと、アレンジが甘いように感じる。余談だが、収録曲の半分がメジャーデビュー作「into the green」に再録されている。でも再録されていない曲の方が個人的に好きなのでこのアルバムを聴いてほしい。

 おすすめの1曲…M-3「サイクル」

 

       

 国民的バンドMr.Childrenの14thフルアルバム。滅多にCDを買わない父親が買ってきたCDってだけでも個人的にはこのアルバムの傑作ぶりが窺い知れる。屈指のポップアルバムではあるが、ラストの怒涛の3連続バラード以外はミドルテンポの絶妙にセンチメンタルなポップナンバーが多い。みんな大好きM-2「HANABI」はその真骨頂。M-1「終末のコンフィデンスソング」の明るいAメロから半音の動きで揺さぶるサビ、M-4「声」の「イェー!」と叫ぶだけのサビは、ポップでありながらも非凡。ラストのバラード3連発も、ラストの「花の匂い」が大名曲であるためにダレることなく聴ける。

 おすすめの1曲…M-5「少年」

 

  • ALRIGHT - 秦 基博

 そばにいたいよおじさん秦 基博の2ndフルアルバム。僕が初めて買ってもらったCD。当時はシングル曲と初回盤ボーナストラック目当てだったが、アルバム曲も非常にレベルが高い。ハイポジションのコードストロークが印象的なM-1、センチメンタルで疾走感あるM-3、センチメンタルでお洒落なM-5、アコギのカッティングがクールなM-9は聴きどころ。そして秦 基博のアルバムラスト曲は絶対に名曲を放り込んでくるので、ミドルバラードM-12も必聴。初回盤では福耳、一青窈に提供した楽曲のセルフカバーと、槇原敬之のカバーが聴ける。

 おすすめの1曲…M-3「バイバイじゃあね」

 

 '97世代バンド・GRAPEVINEの9thフルアルバム。このアルバムからボーカル田中の歌い方が変わり始め、歌声に包容力が出てきた。また音楽性もこのアルバムから洋楽寄り(USインディー寄り)になり始める。このアルバムの特徴は、M-1、4、6、11、12のような、以前までの泣きメロと、包み込むような温かいバンドサウンドの融合である。なのでGRAPEVINEのアルバムの中でも屈指の初心者に薦めやすいアルバムである。もちろん以前までのダークなGRAPEVINEが好きな人にもM-2、3、5のような曲が用意されている。

 おすすめの1曲…M-12「Wants

 

       

  超絶技巧派バンド・the band apartの4thフルアルバム。このアルバムの特徴は爽やかさと変態さの融合だろう。M-3「I Love You Wasted Junks & Greens」はこれでもかと各楽器が暴れ倒しながらポップで爽やかな曲に仕上がっている。その後に爽やかで落ち着いたM-4「Cosmic Shoes」に繋がることで楽器のテクニックだけで持っているバンドだけではないことが分かる。曲数が実質9.5曲と少なめなのが残念だが、それを差し引いても是非聴くべきアルバム。

 おすすめの1曲…M-3「I Love You Wasted Junks & Greens」

 

       

 今や日本を代表するバンドの1つとなったUNISON SQUARE GARDENの全国デビューミニアルバム。現在と比べてボーカル斎藤の歌声は若干とげとげしく、ドラム鈴木の手数は素人が聴いても分かるレベルで少ない。ベース田淵の荒々しいフレーズとパフォーマンスだけ唯一この頃から変わっていない。しかし、定番曲であるM-2「フルカラープログラム」や、シンプルなバラードのM-4「2月、白昼の流れ星と飛行機雲」など、ハイレベルな王道邦ロックソングを作る能力はこのアルバムで既に証明している。そしてM-3「水と雨について」は今のユニゾンではなかなか聴くことができない荒々しい曲なので是非聴いてほしい。

 おすすめの1曲…M-3「水と雨について」

 

教室

教室

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 愛媛出身のロックバンド・LUNKHEADの5thフルアルバム。このアルバムはタイトル通り、一度ポップ化して失敗したLUNKHEADが、初期の王道ギターロックに凶暴性を加えた新たな音楽性を開拓する過程のアルバムである。M-1「id」、M-2「素晴らしい世界」、M-7「誰かじゃなくて」といった凶暴性が見られる新境地の曲がある一方、M-3「羽根」、M-4「サイダー」といったポップ時代の名残が見られる曲も存在する。また、ポップ時代の名残で全体的に音がもっさりしているのも、「孵化」の途中であるという印象を受ける。初心者には薦めにくいが、LUNKHEADの歴史を知る上では重要なアルバムである。

 おすすめの1曲…M-5「教室」

 

 10年早かったシティポップバンド・APOGEEの2ndフルアルバム。ブラックミュージックを邦ロックに消化したバンドサウンドにシンセを乗っけた不思議なサウンドはデビュー当初革命的ですらあったが、翌年現れたバケモノの影響で売れることはなかった。このアルバムはAPOGEEの特徴である中毒性の高いシンセロックを中心としながらも、M-2のようなギターロックや、M-9、11といったフォーキーな曲、さらに打ち込みサウンドのM-13など、バラエティに富んだ内容となっている。そして、M-5、12は美しいメロディと繰り返しの少ない非凡な展開が素晴らしい名曲である。

 おすすめの1曲…M-12「Just a Seeker's Song」

 

 俺たちの青春のバンド・ASIAN KUNG-FU GENERATIONの4thフルアルバム。3rd「ファンクラブ」が内省的な作風だったのに対して、このアルバムは非常に開放的なアルバムである。M-3からM-4への繋ぎや、全てを包んだ希望でアルバムを締めるM-13も大変魅力的だが、このアルバムは何といってもシングル曲が名曲揃いであることがポイント。特にM-10、12はカッコよさと涙腺崩壊メロディを兼ね備えた、アジカンの中でも3本の指に入る名曲。

 おすすめの1曲…M-12「或る街の群青」